2019年11月に報道された、63歳のドイツ人男性がペットの犬に舐められたことが原因で感染症を患い、多臓器不全を伴う敗血症で死亡した。
通常、犬や猫に噛まれたり引っ掻かれた人間が感染症にかかる場合
- 高齢
- 糖尿病患者
- アルコール依存者
などの条件が重なると、重症になる可能性が高くなる。
しかし、今回死亡した男性は健康で病歴・体の傷もない状態だったそうだ。
男性の身に一体何が起きていたのでしょうか?
古いニュースですが、注意喚起も兼ねて当時のニュース記事から解説していきます。
初期症状
男性が病院を訪れたのは発症してから3日目だった。
高熱や息切れなどのインフルエンザに似た症状が出始め、3日目には血管の損傷が原因だと思われる赤黒いの斑点が顔や足に現れ、手や足の先が痛むようになり病院に駆け付けた。
診断
渡航歴も無く、しばらく病院を利用してなかったことから医師は髄膜炎※を疑った。
しかし髄膜炎の特徴的な症状である頭痛や肩こりなどが無いため更なる検査を行ったところ、敗血症※の兆候が見られ集中治療室へ移された。
腎臓・肝臓の機能も低下し、排尿が困難だった。
男性は敗血症と紫斑病※と診断された。
治療
入院から30時間で男性の容体が急激に悪化した。
CT検査で皮膚に感染症は確認できなかったが、抗菌剤を投与するなど必死の治療を続けた。
しかし病状はどんどん悪化していき、男性は一時心肺停止状態に陥る。
蘇生に成功し生命維持装置に繋がれたが、手足の壊疽※が進行し皮膚が紫色に変色し、表皮には水泡が現れていた。
途中原因が発覚したが、入院して16日目にこれ以上の治療は困難と判断され、生命維持装置が外され死亡してしまった。
原因
治療を開始して4日目に原因が判明した。
カプノサイトファーガ・カニモルサスという犬や猫の口内に常駐する細菌が原因だった。
これは国内の犬の8割、猫の6割が保菌しているといわれている。
先述した通り、カプノサイトファーガ感染症は犬や猫に噛まれたり、引っ掻かれることで細菌が体内に入り込み感染するが、健康な人間が飼い犬に舐められただけで感染・発症し、死亡に至るケースは非常に稀であるという。
通常は免疫不全の患者が感染し、その際の死亡率が25%程度だそう。
ペットを飼っている人は、通常の感染症の症状を超える異常(インフルエンザに似た症状・皮膚下の出血など)が見られる場合は早急に医師の診断を仰ぐべき
と注意喚起されています。
その際には、ペットを飼っていることを伝えることも大切だ。
簡易用語解説
髄膜炎
頭蓋骨と脳の間には髄膜という膜があり、脳を包み込んで保護する役割を持っている。この髄膜に細菌やウイルス、結核菌、真菌(カビ)などが感染し、炎症を起こした状態を髄膜炎という。
https://doctorsfile.jp/medication/169/
敗血症
敗血症とは、細菌が感染して体の中で繁殖してしまい、組織や臓器が正常に働かなくなり、生命を脅かす状態になったときの生体の反応です。
お医者さんオンライン
紫斑病
皮膚や粘膜に斑状の内出血が起こり、赤紫色を呈する病気の総称。 血小板の減少や機能異常、血管の病的変化などで起こる。
webio辞典
壊疽
壊死(えし)に陥った組織に、腐敗菌の感染や乾燥などによる二次的変化がおきた場合をいう。壊死組織が腐敗菌の感染を受けると緑黒色を呈し、汚くなり、悪臭を放つようになる。
コトバンク