動物実験

人間の赤ちゃんをチンパンジーと一緒に育てた結果…1930年代に行われた恐ろしすぎるその実験の結末とは

動物実験
photo by:A/V Geeks

1930年代に身の毛もよだつような、恐ろしい実験が行われていました。

The Ape and the Child: a Study of Environmental Influence upon Early Behavior

https://www.nature.com/articles/133891b0

これは実験を行ったアメリカの比較心理学者であるウィンスロップ・ケロッグ氏が出版した著書のタイトルです。

日本語では「猿と子供:初期の行動に対する環境の影響の研究」という意味で、実験のテーマは『類人猿の人間化』。

その恐ろしい実験の概要は、人間とチンパンジーの赤ちゃんを兄妹のように育てると、チンパンジーは人間に近付くのかというものでした。

なぜその実験に踏み切ったのか…

ウィンスロップ氏は、大学時代に読んだ「オオカミに育てられた姉妹・アマラとカマラ」に関連する著書からこの実験の着想を得たと言われています。

内容を簡潔に説明すると、『オオカミに育てられた少女達は、オオカミのように振る舞った』というものです。

アマラとカマラ
引用:timeline.com

彼が興味を持っていたテーマは『霊長類である人間と非人間の比較発達研究』です。

オオカミに育てられた姉妹から着想を得た彼は「人間の赤ちゃんを文明が発達していない環境に置き、成長を観察するとどうなるのか」という実験内容を思い付きますが、それは倫理的な問題で難しいだろうと考えました。

そこで、逆に「野生動物を文明が発達した環境(人間の家)で育てる」という方法を選んだそうです。

実験の内容

被験者は

  • ウィンスロップ・ケロッグ氏の実子である生後10か月の男児ドナルド・ケロッグ
  • 生後7か月のメスのチンパンジーグア

の1人と1匹(以降執筆の便宜上”2人”とする)で、実験期間は5年間。

引用:A/V Geeks

両親は2人を人間の子供として扱い、同じように声をかけ、同じベッドで眠り、同じおもちゃを買い与えました。

同じ方法でご飯を食べ、同じ服を着て、叱るときでさえも同じ方法だったそうです。

ここまでは普通に思えますが、ドナルドが泣くまで回転椅子に座らせたり、銃声のような大きな音に対してどちらが早く反応するかを試したりといった非人道的なテストも行っていたそうです。

引用:A/V Geeks

驚くべきことに、この段階では人間であるドナルドよりもチンパンジーのグアの方があらゆるテストで良い成績を残したそうです。

しかし当初5年間の期間を想定していたこの実験は、予想外の結果によって9カ月で中止されたのです。

実験中止の理由

引用:A/V Geeks

この実験の目的は『チンパンジーの人間化』でした。

しかし実験を続けると、人間の赤ちゃんであるドナルドがどんどん凶暴なっていきました。

ドナルドは人間に噛みつき、チンパンジーのように這いずり回り、お腹がすくと唸り声を出すようになってしまいました。

逆に『人間のチンパンジー化』が進んでしまったのです。

実験中止の理由は諸説ありますが、これが大きな原因だったのではと推測されています。

実験後の2人

チンパンジーのグアは段階的に野生に慣れさせ、1932年3月に霊長類生物学研究所のコロニーに戻されたそうです。

ドナルドは実験後には普通に育てられましたが、成人し両親が亡くなった1972年の1年後、43歳で自害しました。

実験との因果関係は定かではありませんが、何かを抱えていたのかもしれません。


References

A/V Geeks:Comparative Tests On A Human And A Chimpanzee Infant Of Approximately The Same Age, Pt 2

dailystar:Baby raised with chimp ‘sister’ in cruel study began acting like ape and met tragic end

Wikipedia:Winthrop Kellogg

あにまるトリビア
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